特定技能制度とは?概要、メリット・デメリットと今後の展望を解説
日本の産業界は人手不足という巨大な課題に直面しています。そこで、この問題の解消の鍵として注目されているのが「特定技能制度」です。この記事では、制度の概要から、メリット・デメリット、今後の展望まで分かりやすく解説します。
※2023年12月現在、特定技能制度は改正に向けて審議が進められています。新制度「育成就労制度(仮称)」については以下の記事で解説しています。
国内外の労働法制に精通している弁護士・杉田昌平氏の専門的な知見のもと、「外国人雇用で適用される法令」「不法就労のリスクと予防策」など、外国人雇用の実務に必要な基礎知識をまとめました。
特定技能とは?
特定技能とは、2019年に新設された在留資格のことです。ここでは、特定技能制度の概要や目的、対象となる外国人、主な取得要件について解説します。
特定技能制度の概要と目的
特定技能制度は、国内での人材確保が難しい分野における人手不足を解消するために新設された外国人労働者受け入れ制度です。制度を利用することで、企業は一定の技能や知識を有する外国人労働者を中長期的に受け入れることが可能となります。
特定技能制度の主な目的は、経済の成長を支えるための労働力供給を確保することです。特に介護、建設、農業など、労働力の供給が不足している分野での雇用機会を拡大し、日本経済の持続的な成長の実現を目指しています。
特定技能の対象国や取得要件
特定技能には対象となる国や地域の制限は設けられていませんが、技能や経験を評価するための基準が存在します。
具体的には、各業種における技能試験や日本語能試験の合格などです。これにより、企業は適切なスキルを持つ人材を確保できます。
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特定技能制度を利用する企業のメリットとデメリット
人材確保の選択肢として、特定技能制度の利用を検討する企業が増えています。制度を利用するとどのようなメリット・デメリットがあるか、下記で確認しておきましょう。
【メリット】
- 人手不足の解消
- 経験豊富な人材の導入
- 中長期的な人材確保
人手不足の解消
即戦力として活躍できる人材を採用できます。
経験豊富な人材の導入
実務経験を持った外国人材により、新しいアイデアや取り組みの提案が期待できます。
中長期的な人材確保
特定技能には「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類があり、特定技能1号は最長5年間の在留期間が認められ、特定技能2号は在留期間に上限がありません。そのため、一定期間の安定した雇用が見込めます。
【デメリット】
- 支援体制の構築が必要
- 手続きが複雑
- 言語の壁
支援体制の構築が必要
特定技能外国人が、日本の生活環境や文化になじむためのサポート体制の構築が必要です。
手続きが複雑
日本人を雇用する場合に比べ、在留資格の取得や在留期間の更新など複雑な手続きが必要なため、それに伴う手間やコストが発生します。
言語の壁
初めから高い日本語能力があるとは限らないため、やさしい日本語の導入など円滑にコミュニケーションをとるための配慮が求められます。
自社で特定技能制度を利用する際は、これらのメリットとデメリットを総合的に考慮し、最適な人材確保の策を立てることが重要です。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
採用手続きの具体的なステップ
外国人を採用する際の手続きは、慎重な準備と正確な手順が求められます。採用までの一般的な流れを確認しておきましょう。
- ニーズの確認
- 求人広告の掲載
- 書類選考
- 面接
- 在留資格の手続き
- 入社手続き
ニーズの確認
採用する外国人材に必要なスキルや経験を明確にした上、どのような役職で、どのような業務を担当させるかを整理します。
求人広告の掲載
必要な資格や経験、待遇などを明記し、採用情報を対象国や国内の求人サイトに掲載します。
書類選考
履歴書や職務経歴書を基に、適切な候補者を選びます。
面接
選んだ候補者を面接し、技能や人物像を確認します。
在留資格の手続き
採用が決定したら、在留資格の変更や新規取得の手続きを進めます。多くの場合、在留資格の手続きは外国人本人が行いますが、企業が代理で行ったり、必要な書類を用意したりすることがあるため、企業側も在留資格の手続きを把握しておくとよいでしょう。
入社手続き
在留資格の申請が認められたら入社日を決定し、雇用契約の締結や健康診断などの手続きを進めます。
これらのステップを踏むことで、外国人の採用を円滑に進めることができます。各ステップでの詳細や必要な書類などは、職種や業界、外国人の国籍などによって異なる場合がありますので注意が必要です。
特定技能制度の最新情報を知る方法
特定技能制度の内容は改正される場合があります。人事担当者として、最新の情報をキャッチアップすることは非常に重要です。情報収集には、以下を活用するとよいでしょう。
- 厚生労働省の公式サイト
- 業界団体の情報
- eラーニングプラットフォーム
- 専門家やコンサルタントとのつながり
厚生労働省の公式サイト
法改正や新しい取り決めなど、最新の情報を確認できます。
業界団体の情報
各業界の代表的な団体が運営する公式サイトやメールマガジンで、動向やセミナー情報を収集できます。
eラーニングプラットフォーム
特定技能制度に関するコースやウェビナーを通じて、自宅や職場で学習が可能です。
専門家やコンサルタントとのつながり
弁護士、行政書士などの在留資格に関する専門家とつながることで、直接最新情報を聞けたり、アドバイスを受けたりすることができます。
これらを活用することで、情報収集が効率的に行えます。
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特定技能外国人の教育・労務管理の効果的な方法
外国人材の能力を最大限生かすためには、適切な教育と労務管理が欠かせません。以下に、その効果的な方法を紹介します。
- 異文化理解の促進
- 業務指導の明確化
- 定期的なフィードバック
- 評価基準の明確化
- 社内コミュニケーションツールの活用
異文化理解の促進
異文化理解のための研修を行い、外国人従業員の文化や価値観を共有することで、相互理解を深めます。
業務指導の明確化
業務の手順や注意点は明確に伝えてください。さらに、専任の相談役を指定し、疑問や不明点が出た際のサポート体制の強化を図ります。
定期的なフィードバック
外国人従業員の業務への取り組みや成果を定期的に評価し、課題や改善点を共有します。
評価基準の明確化
昇給や昇進の条件など人事評価の基準を明確化し、目標達成に向けた動機付けをサポートします。
社内コミュニケーションツールの活用
情報共有を円滑にするため、SlackやChartworkなど自社に合った適切なツールを導入します。
これらを行うことで、外国人従業員のモチベーションと業務効率の向上が期待できるでしょう。
国内外の労働法制に精通している弁護士・杉田昌平氏の専門的な知見のもと、「外国人雇用で適用される法令」「不法就労のリスクと予防策」など、外国人雇用の実務に必要な基礎知識をまとめました。
特定技能制度の今後の展望
特定技能制度の導入以降、多くの外国人労働者が来日し、多様な分野でその力を発揮しています。
今後の展望として、以下のポイントが考えられます。
- 対象分野の拡大
- 制度の洗練
- サポート体制の強化
対象分野の拡大
特定技能制度の対象となる分野が拡大し、さらに多くの分野で外国人の採用が進む可能性があります。
制度の洗練
現行制度の運用を基に、多くの企業が利用できるよう、より柔軟かつ効率的な制度へ最適化を図ることが検討されています。
サポート体制の強化
外国人労働者の生活やキャリアなどのサポートの充実を求める声が高まり、行政や関連団体による新しい支援策の導入やプログラムの充実が期待されています。
この制度は、日本の経済や社会に大きな影響を持つため、定期的な見直しと改善が不可欠です。企業側としては、これらの変化を見逃さず、最新の情報を確実に収集し、適切な対応を心掛けることが求められます。
参考)
出入国在留管理庁
「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考える事業者の方へ~」(閲覧日:2023年9月6日)
「在留資格「特定技能」」(閲覧日:2023年9月6日)
外務省「在留資格特定技能」(閲覧日:2023年9月6日)
外国人雇用相談室「外国人労働者の受入れ制度 採用担当者に必要な実践的な情報を解説」(閲覧日:2023年9月6日)
出入国在留管理庁『特定技能総合支援サイト』「雇用の流れ」(閲覧日:2023年9月6日)