【外国人材雇用】企業が押さえておきたい就労ビザの基礎知識
外国人材の採用計画を立てるためには、就労ビザへの理解が不可欠です。本稿では、就労ビザの概要や在留資格との違い、雇用の際の手続きなどを解説します。就労ビザの基礎知識を押さえ、優秀な外国人材の獲得に向けて動き出しましょう。
国内外の労働法制に精通している弁護士・杉田昌平氏の専門的な知見のもと、「外国人雇用で適用される法令」「不法就労のリスクと予防策」など、外国人雇用の実務に必要な基礎知識をまとめました。
目次
就労ビザとは
就労ビザとは、外国人が就労目的で日本に入国する際に必要となる推薦書です。在留資格と混同しやすいですが、在留資格は日本に滞在し、学業や就労など特定の活動をするための資格のため、厳密には別物です。
しかし、日本では「就労できる在留資格=就労ビザ」の意味で使われることがあり、通称として一般化しているといえます。
在留資格の主な種類とその特徴
在留資格は全部で29種類(2023年9月時点)あり、雇用できる在留資格と雇用できない在留資格があります。
在留資格のカテゴリ | 特徴 | 代表的な在留資格 |
---|---|---|
就労できる在留資格 | 報酬を受ける活動の範囲に 制限あり | 技術・人文知識・国際業務、 高度専門職、特定技能など |
身分・地位に基づく在留資格 | 報酬を受ける活動に制限なし | 永住者、日本人の配偶者等、 定住者、永住者の配偶者等 |
就労の可否は指定される活動による | 指定された活動が報酬を受け るものであれば就労可能 | 特定活動 |
就労が認められない在留資格 | 就労不可 ただし、資格外活動 許可を受ければ原則週28時間まで就労可能 | 文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在 |
就労できる在留資格(報酬を受ける活動の範囲に制限あり)は、在留資格ごとに雇用できる職種の範囲が限定されています。そのため、これから外国人材の雇用を検討する場合は、任せたい業務を明確化し、どの在留資格を持つ人材が必要か特定しておきましょう。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
在留資格の取得要件
在留資格の取得要件は、種類ごとに異なります。
例えば、技術・人文知識・国際業務の場合、「自然科学分野または人文科学分野の技術・知識を要する業務」に従事するなら「大学・専修学校などで業務に関連する科目を専攻し、卒業していること」または「10年以上の実務経験」が必要です。
一方、「外国の文化を基盤とする思考または感受性を必要とする業務」に従事するのであれば「3年以上の実務経験」が求められます。
高度専門職1号の場合は「高度人材ポイント制において、学歴、職歴、年収などの各項目を合算したポイントが70以上あること」が要件です。
特定技能の場合、学歴要件はありませんが「技能試験や日本語試験に合格していること」が要件とされています。
尚、技能実習制度・特定技能制度は2023年12月現在、改正に向けて審議が進められています。新制度「育成就労制度(仮称)」については以下の記事で解説しています。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
在留資格の有効期限
在留資格はそれぞれ在留期間が決まっており、引き続き雇用したい場合は在留期間の満了日前に更新手続きが必要です(更新手続きについては後述します)。
例えば、技術・人文知識・国際業務の在留期間は5年、3年、1年または3カ月で、何度でも更新可能です。特定技能1号の在留期間は1年、6カ月または4カ月で、通算で最長5年まで更新できます。
一方、高度専門職1号の在留期間は一律5年で、在留期間3年で永住許可申請が可能です。
定められた在留期間が過ぎるとオーバーステイになってしまうため、採用の際は在留期間の満了日を在留カードやパスポートで確認しましょう。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
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在留資格について企業が知っておくべきポイント
在留資格について正しく理解しておかないと、法令違反を犯しかねません。ここでは、企業側が採用段階で知っておきたい基本的なポイントを解説します。
適切な在留資格を持っているか確認する
外国人材を採用する際は、自社の業務内容に合った在留資格を持っているか、選考段階で在留カードを確認しましょう。
合致する在留資格を持っていない場合は、取得できそうか経歴を確認してください。前述の通り、在留資格によっては学歴や実務経験などが必要な場合があるので、要件を把握しておくことが重要です。
業務内容は在留資格の活動範囲内にする
雇用後は、在留資格で許可されている活動範囲外の仕事をさせないよう注意が必要です。活動範囲外の仕事をさせると、外国人材本人は不法就労となり、雇用企業側は不法就労助長罪に該当します。
例えば、ホワイトカラーの職種に就くことが認められている技術・人文知識・国際業務の在留資格の人が、店舗で主にレジ打ちをするのは活動範囲外のため認められません。活動範囲外の仕事を任せたい場合は、外国人材に在留資格を変更してもらいましょう。
入社後の研修やOJTの内容も、活動範囲を超えていないか注意が必要です。ただし、研修やOJTが「入社時の一時的なもの」「日本人の大卒従業員なども実施するもの」など出入国管理関係法令で認められた範囲内であれば許可されます。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
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在留資格関連で必要となる主な手続き
外国人雇用では、場合によって在留資格の新規取得・変更、在留期間の更新といった手続きが必要です。大まかな流れを確認しておきましょう。
在留資格の新規取得手続き
海外在住の外国人材を雇用する場合、下記の流れで在留資格の新規取得を申請するのが一般的です。
1. 企業側が必要書類を用意し、管轄の地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請を行う
2. 在留資格認定証明書が交付されたら、企業側が現地の外国人材に送付する
3. 外国人材本人が現地の日本国大使館・領事館に在留資格認定証明書などの必要書類を提出し、ビザの発給を受ける
4. 外国人材が来日し、雇用開始
在留資格認定証明書が交付されるまで1~3カ月かかるのが目安のため、入社時期に間に合うように採用計画を立てることが重要です。
在留資格の変更手続き
新卒者や転職者を採用する際など、保有する在留資格で認められる活動と自社の業務内容が異なる場合は、在留資格変更許可申請が必要です。
外国人材本人が必要書類を用意し、管轄の地方出入国在留管理局に提出するのが一般的です。申請から処理までに2週間~1カ月ほどかかるため、入社予定日に間に合うよう早めの手続きを促してください。
在留期間の更新手続き
外国人材に規定の在留期間を超えても就労してもらいたい場合、在留期間更新許可申請が必要です。その場合、外国人材本人が管轄の地方出入国在留管理局に必要書類を提出するのが一般的です。
申請が処理されるまでに平均2週間~1カ月かかるため、在留期間満了日を過ぎないよう余裕を持って申請することをすすめましょう。在留期間更新許可申請は在留期間満了日の約3カ月前から可能です。不法就労を防ぐためにも、遅くとも満了日の1カ月前までに行うとよいでしょう。
国内外の労働法制に精通している弁護士・杉田昌平氏の専門的な知見のもと、「外国人雇用で適用される法令」「不法就労のリスクと予防策」など、外国人雇用の実務に必要な基礎知識をまとめました。
外国人雇用関連で困ったときの相談先
外国人雇用に関してトラブルや疑問が生じたときは、専門機関や専門家などに相談するのがおすすめです。
例えば、入国や在留手続きなどについて問い合わせたいときは、外国人在留総合インフォメーションセンターを利用できます。労働条件や安全衛生など、外国人材の雇用管理については、全国のハローワークに配置されている外国人雇用管理アドバイザーに相談するとよいでしょう。
外国人材雇用に精通した弁護士や行政書士に相談するのもおすすめです。相談先によっては受け入れ体制の構築や在留資格の申請方法など、さまざまな面で助言やサポートを受けられます。
参考:
外務省
「制度の概要」(閲覧日:2023年10月11日)
「申請についての留意事項」(閲覧日:2023年10月11日)
出入国在留管理庁
「在留資格一覧表」(閲覧日:2023年10月11日)
「資格外活動許可について」「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」2008年3月公表,(閲覧日:2023年10月11日)
「高度人材ポイント制とは?」(閲覧日:2023年10月11日)
「どのような優遇措置が受けられる?」(閲覧日:2023年10月11日)
「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」(閲覧日:2023年10月11日)
「在留資格認定書名所交付申請」(閲覧日:2023年10月11日)
「在留資格変更許可申請」(閲覧日:2023年10月11日)
「在留期間更新許可申請」(閲覧日:2023年10月11日)
「外国人在留総合インフォメーションセンター等」(閲覧日:2023年10月11日)
厚生労働省
「外国人雇用管理アドバイザー」(閲覧日:2023年10月11日)
「不法就労に当たる外国人を雇入れないようにお願いします。」(閲覧日:2023年10月11日)