日本の外国人労働者とは?企業側が知っておきたい基本情報を解説
近年、外国人労働者の数は増加傾向にあり、さまざまな業界で力を発揮し、日本社会を支えています。外国人労働者の雇用は社内に多様性をもたらしますが、彼らに力を発揮してもらうには文化や言語の違いを理解し、適正に受け入れることが大切です。
本稿では、外国人労働者の現状とともに、採用時のメリット・デメリットや受け入れ前に知っておきたい基本情報、今後の展望について解説します。
目次
日本における外国人労働者とは
外国人労働者とは、就労できる在留資格を持ち、日本国内で働く外国人のことです。 近年、日本の労働力不足を補うため、外国人労働者の受け入れが拡大されており、さまざまな業界で活躍しています。
外国人労働者の多くは、報酬を受ける活動の範囲が定められた在留資格を取得しています。例えば、「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などが代表的です。
その他、報酬を受ける活動に制限がない、身分に基づく在留資格(「永住者」、「日本人の配偶者等」など)を取得し、就労している外国人もいます。
国籍としては、主に中国、ベトナム、フィリピンなどのアジア圏が中心ですが、ブラジルやペルーといった南米の国々も見受けられます。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
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なぜ外国人労働者を採用するのか?メリットとデメリット
外国人労働者を採用するメリットとしては、第一に労働力不足の解消が挙げられます。日本の高齢化が進む中、若い労働者が不足している業界や職種が増えており、外国人労働者はその穴を埋める重要な役割を果たしています。
また、多様な文化や価値観を持つ外国人労働者がチームに加わることで、イノベーションが生まれやすくなるのもメリットの一つです。
一方、デメリットとしては、言語や文化の壁が挙げられます。しかし、言語や文化の壁を越えてコミュニケーションを取り、労働環境を整えることで、企業の国際化やダイバーシティ&インクルージョン(個の違いを認め、尊重し、生かし合いながら協働すること)の推進につながる可能性があります。
このような前向きな変化を自社に起こすためには、彼らをただの「労働力」としてではなく、企業成長の一員として受け入れ、適切なサポートを提供することが重要です。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人相談室
参考:Lightworks BLOG
外国人労働者採用時の注意点
外国人労働者を雇用する際は、関連する法律や制度を守ることが大切です。法令違反を防ぐためにも、採用時の注意点を確認しておきましょう。
労働基準法の遵守
日本の労働基準法は外国人労働者にも適用されるため、日本人従業員と同等に労働条件を定めましょう。
労働時間は、原則1日8時間、週40時間を超えてはいけません。休日は1週間に最低1日以上、または4週間で4日以上確保してください。給与は最低賃金法を遵守し、日本人と同等以上の金額を支払う必要があります。
適正な社内制度を構築するためにも、経営陣や人事担当者などがコンプライアンスの重要性を理解し、周知することが必要不可欠です。
在留資格の確認と関連する手続き
外国人労働者を採用する際は、自社で就労できる在留資格を取得しているか確認しましょう。持っていない場合は、取得できそうか経歴を確認してください。
在留資格の取得には時間がかかるため、入社日に間に合うよう逆算して採用活動を行うことが重要です。在留資格ごとに在留期間が決まっているので、採用後は在留期間の満了日前に更新手続きをするよう、外国人労働者に促しましょう。
また、雇い入れや離職時には「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する必要があります。
外国人労働者が就労しやすい労働環境の整備
外国人労働者が安心して働ける環境の整備は、生産性向上につながります。円滑なコミュニケーションを取れるよう、日本語やビジネスマナーの教育を行いましょう。
慣れない異国で悩みを抱え込む人が少なくないので、メンター制度を導入するなどメンタル面での支援も効果的です。
また、昇進や昇給の条件を分かりやすく提示するなど、評価制度の見直しも求められます。短期間でキャリアアップできる道を用意すれば、モチベーションアップにつながるでしょう。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人相談室
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外国人労働者の採用をサポートする主要な機関や制度
外国人労働者を適正に受け入れるためには、関連機関や制度などを活用し、サポートを受けることが重要です。主要機関・制度は下記の通りです。
・出入国在留管理庁:在留資格に関する手続きや雇用に関する一般的な質問などに対応
・外国人技能実習機構(OTIT):技能実習生の受け入れに関する相談に対応
・ハローワーク:外国人労働者の求人申し込み、求職中の外国人労働者と企業とのマッチングなどに対応
・外国人雇用サービスセンター:留学や専門的・技術的分野の在留資格などを持つ、高度外国人材の受け入れに関する相談に対応
・外国人雇用管理アドバイザー制度:外国人労働者の雇用に関する問題分析や、改善点の提案などに対応
これらの機関や制度を活用することで、採用活動を円滑に進めることができます。
日本における外国人労働者の今後の展望
日本の生産年齢人口減少に伴う人材不足に対処する手段として、今後も外国人労働者の需要が増加する見込みです。特に医療・介護、農業、IT分野などでの活躍が期待されます。
政府は2023年6月に特定技能2号の対象分野拡大を閣議決定するなど、外国人労働者の受け入れを推進しています。他にも、現行の技能実習制度の廃止や新制度創設の動きもあり、外国人労働者雇用に関する情報は大きく様変わりするでしょう。
また、外国人労働者の労働環境改善の取り組みが進むことも推測されます。世界的な人材不足により、外国人労働者の獲得競争は激しくなるでしょう。
優秀な外国人労働者を獲得するためには、安い労働力として都合良く利用するのではなく、人権を保障し労働・生活環境を改善しなくてはなりません。
このことから、外国人労働者を雇用する企業は、法令違反を犯さないよう最新の情報をキャッチアップすることが求められます。
参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人相談室
参考:
厚生労働省
「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」,2023年1月27日公表,(閲覧日:2023年9月6日)
「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和4年10月末現在)」,2023年1月27日公表,(閲覧日:2023年9月6日)
「労働時間・休日」,(閲覧日:2023年9月6日)
内閣府
「令和5年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)」,(閲覧日:2023年9月6日)
厚生労働省,都道府県労働局,ハローワーク
「外国人雇用はルールを守って適正に」,2023年6月公表,(閲覧日:2023年9月6日)
出入国在留管理庁
「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」,2022年12月公表,(閲覧日:2023年9月6日)
「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」,(閲覧日:2023年9月6日)
総務省
「生産年齢人口の減少」,(閲覧日:2023年9月6日)
法務省
「中間報告書(概要)(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議)」,2023年5月11日公表,(閲覧日:2023年9月6日)