外国人留学生を正社員・アルバイトで採用する方法 注意点も解説

外国人留学生の数は2013年以降増加傾向にありましたが、コロナ禍の影響で2020年から2022年まで減少を続けています。そのような中、日本政府は2033年までに外国人留学生を40万人受け入れることを目標として宣言しました。

外国人留学生の受け入れ拡大の背景には、少子高齢化による労働力不足があります。優秀な人材獲得のため、外国人留学生の採用を検討される企業の方も多いのではないでしょうか。

外国人留学生の採用は、日本人学生の採用にはない手続きや注意点があるため、正しく雇用することが必要不可欠です。

本稿では、日本における外国人留学生の採用状況や、正社員・アルバイト採用の方法、採用から活躍までのステップなどを解説します。

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外国人留学生の日本での採用状況

2022年の調査によると、在留資格「留学」・「特定活動(日本の大学を卒業後、就職が内定している、または日本での就職活動を続けている)」を持つ外国人のうち、日本での就職を目的として在留資格の変更を行い、許可された人は3万3415人です。

ただし、就職時に「特定技能」の在留資格に変更した人はこの数に含まれていないため、実際にはさらに多くの外国人留学生が日本で就職していると推測されます。

ここでは、外国人留学生の採用状況を項目別に見ていきます。

就職後の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」が全体の8割以上

外国人留学生の就職後の在留資格として最も多いのは「技術・人文知識・国際業務」で、全体の86.3%(2万8853人)を占めています。次に多いのが「特定活動」で6.2%(2087人)、「教授」2.8%(934人)が続きます。

就職先の業種は卸売業・小売業、職務内容は翻訳・通訳が多い

外国人留学生の就職先を業種別に見ると、製造業が全体の15.2%(7131人)、非製造業が84.4%(3万9505人)となっています。製造業で最も多いのは金属製品2.7%(1284人)、非製造業では卸売業・小売業19.3%(9025人)です。

職務内容別では、最も多いのが翻訳・通訳16.1%(8792人)で、2位に情報処理・通信技術7.7%(4183人)、3位に企画事務(マーケティング、リサーチ)7.4%(4036人)が続きます。

全体の9割以上がアジア出身者、1位は中国国出身者

日本で就職した外国人留学生の国籍・地域別内訳1位中国(香港およびマカオを除く)(1万182人)、2位ベトナム(8406人)、3位ネパール(5769人)の順となっており、95.7%がアジア諸国出身者です。

最終学歴は専修学校卒が多い

日本で就職した外国人留学生の最終学歴は専修学校卒が48.5%(1万6191人)と最も多く、次に大学卒の29.2%(9770人)、大学院卒の18.0%(6,002人)が続きます。大学・大学院卒を合わせると全体の47.2%となり、専修学校卒と拮抗しているといえます。

外国人留学生の6割以上がアルバイトをしている

2021年の調査によると、私費外国人留学生の67.0%がアルバイトに従事しています。職種としては飲食業が全体の35.0%(1719人)と最も多く、次にコンビニのレジ打ちなどの営業・販売30.2%(1484人)、工場での組み立て作業6.1%(301人)が続きます。

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外国人留学生を採用するメリット

外国人留学生を採用するメリットとしては、主に下記が挙げられます。

  • 日本の暮らしに慣れているため、職場になじみやすい
  • 母国語を生かした業務を任せられるため、多言語対応が可能になる
  • 母国と日本の文化やマナーを熟知しているため、海外進出の足掛かりになる
  • 社内コミュニケーションが活性化し、イノベーションの創出につながる

外国人留学生は日本で長く学生生活を送っており、そこで培われた高度な語学力や知識を生かして即戦力としての活躍を期待できます。また、優秀な外国人留学生の採用が日本人従業員への刺激になり、社内の活性化につながる可能性もあるでしょう。

それでは、外国人留学生を採用するにはどのような手続きが必要なのか、次章で詳しく見ていきます。

外国人留学生を正社員採用するには在留資格の変更が必要

外国人留学生を正社員採用する場合、在留資格を留学から就労できる在留資格に変更する必要があります。

1章の通り、留学からは技術・人文知識・国際業務へ変更するケースが多く見られます。この在留資格で就労できるのは、通訳やマーケティング業務など「ホワイトカラー」の職種です。

技術・人文知識・国際業務は、自然科学分野・人文科学分野の知識や技術、外国の文化を基盤とした思考や感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を要する仕事に就く外国人に付与される在留資格です。そのため、工場のライン作業のような産業・サービスの現場での業務はできません

産業・サービスの現場での業務ができる在留資格としては、2019年に新設された特定技能が挙げられます。

特定技能は労働力不足が顕著な一部の業界において、専門的な知識と技術を持つ外国人を受け入れることを目的に作られました。

いずれの在留資格取得要件があり、変更時にもそれを満たさなければなりません。技術・人文知識・国際業務の場合は、「業務内容と専攻科目の関連性」「業務内容の該当性が認められることなどが挙げられます。特定技能の場合は、技能試験・日本語能力試験へ合格することなどが必要です。

なお、在留資格を変更する際は、外国人留学生本人が管轄の地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行います。在留資格の変更には2週間~1カ月かかるため、入社日に間に合うよう卒業前の手続きを促しましょう。

外国人留学生をアルバイト採用するには資格外活動許可が必要

留学の在留資格を持つ人は原則就労できないため、外国人留学生がアルバイトするには資格外活動許可が必要です。

資格外活動許可とは、在留資格で許可された活動範囲外で、報酬を伴う活動をする際に必要となる許可のことです。

資格外活動許可を受けていない外国人留学生をアルバイト採用すると、本人は不法就労となり、雇用企業は不法就労助長罪に問われます。

資格外活動許可を受けているか在留カードやパスポートで確認できるため、採用段階で提示してもらいましょう。

なお、資格外活動許可は外国人留学生本人が管轄の地方出入国在留管理局に申請します。

申請から取得までに2週間~2カ月ほどかかるため、外国人留学生が資格外活動許可を受けていない場合はアルバイトを始める前に早めに取得してもらいましょう。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

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外国人留学生を採用する際の注意点

外国人留学生を採用する際は、適正に雇用できるよう在留資格を確認し、アルバイトであれば就労時間の上限に注意する必要があります。以下で内容を見ていきましょう。

在留資格の確認

外国人留学生を採用する際は、選考段階で在留カードを提示してもらい「留学の在留資格を持っているか」「在留期間の満了日を過ぎていないか」確認しましょう。

アルバイト採用の場合は、資格外活動許可を受けているか在留カード裏面資格外活動許可欄を確認してください。

また、不法滞在の外国人を採用すると不法就労助長罪に該当するので、偽造在留カードではないか確認も必要です。詳しい確認方法は、こちらの記事を参考にしてください。

アルバイトの場合は就労時間の上限に注意

外国人留学生が資格外活動許可を受けて働く場合、原則週28時間(教育機関の長期休業中は1日8時間・週40時間)までしか就労できません。そのため、アルバイト採用する際は勤務時間に注意が必要です。

複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、全ての勤務時間を合算して週28時間以内に収める必要があります。

上限を超えると雇用企業側は不法就労助長罪に問われるため、勤務時間を管理しましょう。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

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外国人留学生の採用から活躍までに必要なステップ

ここでは、外国人留学生の採用前から入社後までにかけて、企業側がすべきことを解説します。

採用したい人物像の明確化

採用活動に入る前に、外国人留学生を採用する目的任せたい業務内容必要な日本語能力など人物像を明確化しましょう。

在留資格ごとに活動の範囲が決められているため、採用後に想定される業務内容と活動範囲が一致する在留資格を特定しておくことも必要不可欠です。

日本語能力に関しては、最初から高い能力を求めると業務に必要な専門性やスキルを持つ外国人留学生を見逃す恐れがあります。

入社後に日本語研修を実施するなど今後の伸びしろも考え、柔軟な選考基準を設けるとよいでしょう。

社内共有と知る機会の提供

日本人従業員の中には外国人留学生と協働できるか不安に思う人もいるので、経営者や人事担当者などが現場の従業員に採用方針を丁寧に説明しましょう。

不安を解消するために、外国人留学生と日本人従業員が交流する機会を設けることも重要です。

外国人留学生向けの就職説明会への参加や、インターンシップアルバイトでの受け入れなどを通すことで、協働の在り方をイメージしやすくなるでしょう。

募集段階でキャリアプランを明示

曖昧な人事評価制度やキャリアパスに、違和感を覚える外国人留学生は少なくありません。そのため、募集段階具体的な採用要件や昇給・昇格の条件などを含めたキャリアプランを明示しましょう。

採用方法は、人に仕事を合わせる「メンバーシップ型雇用」ではなく、仕事に人を合わせる「ジョブ型雇用」で行うのが効果的です。

採用活動ではジョブディスクリプションを活用し、職務内容や入社後に期待する役割などを明確にしておくと、求める人材の獲得につながりやすいでしょう。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

日本人と同じように適正な労働条件を用意

外国人留学生を採用する際は、労働条件通知書を交付記載内容を遵守しましょう。

外国人にも日本の労働関係法令が適用されるため、給与や労働時間、福利厚生などの労働条件は法令にのっとって定めること企業側の義務です。国籍を理由に、差別的取り扱いをしてはなりません。

なお、認識のずれによるトラブルを防ぐためにも、労働条件通知書外国人留学生の母国語で用意することをおすすめします。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

外国人留学生に対して入社前のサポート

外国人留学生が入社するまでに、在留資格変更手続きや住居地確保などを支援し、生活基盤を築くサポートをしましょう。

業務に必要な日本語能力や専門知識などがある場合は、入社前に学習支援をすることも効果的です。例えば、企業側が学習機会を提供したり、学習費用を負担したりすることが考えられます。

日本人従業員への教育

日本人従業員に対して研修を実施し、外国人留学生の出身国の文化や習慣価値観などの理解を促しましょう。

外国人留学生によっては日本語の曖昧な表現が伝わりにくい場合があるので、日本人従業員に外国人が理解しやすい話し方を学んでもらうことも重要です。

また、外国人従業員へのハラスメント行為を防ぐため、日本人従業員にコンプライアンスの徹底を求めることも必要不可欠です。

外国人留学生が相談しやすい環境づくり

外国人留学生が社内のさまざまな人と交流できるよう、日本人従業員との交流機会を設けましょう。孤立感や疎外感が増すと離職につながる可能性があるので、メンター制度の導入など相談しやすい環境づくりが求められます。

また、外国人ならではの課題が発生する可能性があるため、社外の相談窓口を伝えておくことも重要です。

評価基準・社内制度の見直し

外国人従業員が自らのキャリア展望に応じてキャリアアップできるよう、人事評価制度を見直し、昇給や昇格の基準を分かりやすくしましょう。評価については客観的な指標を基に丁寧にフィードバックし、評価のポイントや今後の目標などを伝えることも必要です。

また、外国人従業員が出身国のイベントや冠婚葬祭などで帰省できるよう、柔軟な休暇制度の構築も求められます。

さらに、礼拝や断食など宗教上の習慣の違いもあるため、「社内に礼拝室を設ける」「習慣に合わせて勤務時間を設定できるようにする」などの工夫が必要です。

参考)
内閣官房
「参考データ集」,2022年9月公表,(閲覧日:2024年3月10日)
文部科学省
「「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について」,2023年3月7日, (閲覧日:2024年3月10日)
「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック~実践企業に学ぶ12の秘訣~」,(閲覧日:2024年3月10日)
内閣官房教育未来創造会議担当室
「教育未来創造会議「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ<J-MIRAI>(第二次提言)」工程表」,2023年9月5日公表, (閲覧日:2024年3月10日)
出入国在留管理庁
「令和4年における留学生の日本企業等への就職状況について」,2023年12月公表, (閲覧日:2024年3月10日)
「在留資格「技術・人文知識・国際業務」」, (閲覧日:2024年3月10日)
「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」, (閲覧日:2024年3月10日)
「在留資格変更許可申請」, (閲覧日:2024年3月10日)
「在留資格一覧表」, (閲覧日:2024年3月10日)
「資格外活動許可申請」, (閲覧日:2024年3月10日)
「外国人を雇用する事業主の皆様へ不法就労防止にご協力ください。」, (閲覧日:2024年3月10日)
「「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について」, (閲覧日:2024年3月10日)
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
「令和3年度 私費外国人留学生生活実態調査概要」,2022年9月公表, (閲覧日:2024年3月10日)
厚生労働省
「外国人の採用や雇用管理を考える事業主・人事担当者の方々へ 外国人の活用好事例集~外国人と上手く協働していくために~」,2017年3月公表, (閲覧日:2024年3月10日)
出入国在留管理局
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」,2008年3月公表, (閲覧日:2024年3月10日)
外務省
「在留資格特定技能」, (閲覧日:2024年3月10日)
法務省
「「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方」, (閲覧日:2024年3月10日)
厚生労働省,都道府県労働局,ハローワーク
「外国人雇用はルールを守って適正に」,2023年6月公表, (閲覧日:2024年3月10日)

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