【外国人採用の手続き】入社前・入社後の必要手続きと書類を解説

外国人を採用する際は、日本人と同様の手続きの他、外国人ならではの手続きも必要になります。うっかり忘れると法令違反になる恐れがあるので、正しいステップで採用することが重要です。本稿では、選考段階・入社前・入社後に必要な手続きの他、受け入れ企業側が注意すべき点についても解説します。

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【選考段階】外国人採用で必要な手続き

外国人を採用する際は、採用しても問題ない人材か確認が必要です。ここでは、選考段階で必要な手続きについて解説します。

就労できる在留資格を持っているか確認

外国人採用する際は、就労できる在留資格を持っているか在留カードで確認しましょう。就労可能かどうかは、在留カード表面の就労制限の有無欄で確認できます。

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出典:出入国在留管理庁「在留カードとは?」(閲覧日:2024年1月28日)

就労制限の有無は下記のように4パターンあり、就労が認められる場合でも、永住者や日本人の配偶者等といった身分・地位に基づく在留資格以外就労できる仕事に制限があります。

就労制限の有無欄就労できる活動の範囲代表的な在留資格
就労制限なしどのような仕事でも就労可能永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
在留資格に基づく就労活動のみ可就労に制限あり、採用後の業務内容が在留資格で定められた就労活動の範囲内か、確認が必要技術・人文知識・国際業務、高度専門職、特定技能など
指定書により指定された就労活動のみ可採用後の業務内容が、許可されている活動に該当するか、指定書で確認が必要特定活動
就労不可就労が認められていないが、資格外活動許可を受けていれば条件付きで就労可能留学、家族滞在など

就労制限の有無欄の記載が就労不可だった場合は、在留カード裏面の資格外活動許可欄を確認しましょう。

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出典:出入国在留管理庁「在留カードとは?」(閲覧日:2024年1月28日)

資格外活動許可欄に「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」などとあれば、記載の条件で就労できます。

在留カードが偽造でないか確認

在留カードは必ず原本で提示してもらい、偽造在留カードでないか確認しましょう。偽造在留カードを使った外国人を採用した場合、不法就労助長罪に問われる恐れがあります。

在留カードが本物かどうか判断するための方法には、主に以下の3つが挙げられます。

在留カードに施された加工を確認する(色やホログラムの変化、透かし文字の有無など)

・出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」を利用する

・出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」を利用し、在留カードが失効していないか確認する

在留カード等読取アプリケーションは在留カードのICチップを読み取り、情報を端末に表示するアプリです。読み取り情報と券面を見比べて異なる点がある場合や、正しい手順で読み取ってもエラー表示になる場合などは偽造が疑われます

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

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【入社前】外国人採用で必要な手続き

外国人を採用する際は、在留資格の新規取得や変更手続きなどをした上で、雇用契約を締結する必要があります。それぞれの手続きを確認しておきましょう。  

在留資格に関する手続き

外国人採用する際は、外国人が「自社の業務内容に必要な在留資格、または資格外活動許可を有しているか」「有していない場合は取得できそうか確認しましょう。

必要な在留資格を持っていない場合新規取得または変更手続きが必要です。必要な手続きは、外国人が海外在住か日本在住かなど、状況によって下記のように異なります。

外国人の状況必要な在留資格の手続き手続きの流れ
海外在住の外国人を採用在留資格を新規取得受け入れ企業側が地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請を行う
日本国内在住の外国人を中途採用
(採用後の業務内容が外国人の保有する在留資格の活動範囲内)
在留資格の手続きは不要
日本国内在住の外国人を中途採用
(採用後の業務内容が保有する在留資格の活動範囲外)
在留資格の変更手続きが必要外国人本人が地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行う
留学生を新卒採用在留資格「留学」から、自社の業務内容に合致する在留資格に変更手続きが必要外国人本人が地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行う

転職者を採用する場合は、外国人に就労資格証明書を取得してもらうことをおすすめします。

就労資格証明書とは、その外国人が行うことができる就労活動を法務大臣が証明する書類です。これを提出してもらうことで、転職後の業務内容が保有する在留資格の活動範囲内であるかの確認が容易になるので、安心して採用できるでしょう。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

雇用契約の締結

外国人が業務に必要な在留資格を取得している、または取得できる見込みがあれば、労働条件通知書兼雇用契約書内定通知書を交付し、雇用契約を締結します。

認識のずれによるトラブルを防ぐためにも、契約書類は採用する外国人の母国語で作成しましょう。

また、外国人を採用する場合は「本契約は就労に必要な在留資格を取得することで効力が発生する」といった停止条件を契約書に記載しておくことも重要です。

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【入社後】外国人採用で必要な手続き

入社後は、日本人と同様の手続きの他、外国人ならではの手続きも必要になります。入社後の主な手続きは下記の通りです。

必要な手続き手続きの内容
所属(活動)機関に関する届出教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号ハ、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修の在留資格を有する中長期在留者が、入社した日から14日以内に地方出入国在留管理局に提出
所属(契約)機関に関する届出高度専門職1号イ・ロ、高度専門職2号イ・ロ、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行(所属機関との契約に基づいて活動に従事する者に限る)、技能、特定技能の在留資格を有する中長期在留者が、入社した日から14日以内に地方出入国在留管理局に提出
外国人雇用状況の届出受け入れ企業側が、外国人を雇い入れた日の翌月末日までに、外国人雇用状況届出書をハローワークに提出(ただし、雇い入れた外国人が雇用保険被保険者である場合は、雇用保険被保険者資格取得届の提出によって外国人雇用状況の届出を行ったと見なされる)
雇用保険の加入手続き受け入れ企業側が外国人を雇い入れた日の翌月10日までに、雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出
健康保険、厚生年金保険の加入手続き受け入れ企業側が外国人の雇い入れ日から5日以内に、被保険者資格取得届を日本年金機構へ提出
住居地の届出外国人が来日して初めて住居地を定めた場合や、日本国内で住居地を変更した場合、本人が住居地届出書を市区町村の窓口に提出
在留期間更新許可申請外国人が付与された在留期間を超えて在留する際に、本人が地方出入国在留管理局に申請

外国人にも日本の労働関係法令が適用されるため、社会保険の手続きなどは日本人を採用した場合と同じように行いましょう。

外国人ならではの手続きとしては、外国人雇用状況の届出が挙げられます。雇用保険被保険者資格取得届を提出した場合は別途提出する書類はありませんが、そうでない場合は外国人雇用状況届出書の提出が必要です。

外国人雇用状況の届出を行わないと罰則の対象になるのでご注意ください。

また、所属(活動)機関に関する届出、所属(契約)機関に関する届出住居地の届出在留期間更新許可申請など、外国人本人が行う手続きもあるため、本人に手続きを説明するとよいでしょう。

特に、在留期間は付与された期間を1日でも過ぎてしまうとオーバーステイになってしまうため、企業側も更新時期を把握し、外国人本人に在留期間更新許可申請を行うよう促すことをおすすめします。

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外国人を採用する際の注意点

外国人を採用する際は、法令を遵守することが必要不可欠です。ここでは、法令違反を防ぐためにも受け入れ企業が注意すべき点について解説します。

担当業務は在留資格の活動範囲内にする

外国人は保有する在留資格によって日本での活動の範囲が制限されているため、在留資格で認められていない仕事を任せると、外国人本人は不法就労、受け入れ企業側不法就労助長罪に該当する恐れがあります。

不法就労助長罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。

自社の業務内容が在留資格の活動範囲内か不明な場合は、地方出入国在留管理局に問い合わせる他、外国人の採用に詳しい行政書士や弁護士などに相談するとよいでしょう。

技能実習や特定技能における活動範囲は、現在審議されている制度改正によって変更となる可能性があります。技能実習制度・特定技能制度から移行予定の新制度「育成就労制度(仮称)」については以下の記事で詳しく解説しています。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室
不法就労助長罪 外国人雇用におけるポイントを【事例ベースで解説】
外国人労働者の職種 在留資格とのマッチングに注意!採用時のポイント

待遇は日本人と同じく労働関係法令を遵守

外国人には最低賃金法や労働基準法などの労働関係法令が適用されるため、賃金労働条件福利厚生などの待遇は日本人と同じように法令に従って適切に定めましょう。

賃金は最低賃金以上支払うとともに、時間外勤務があった場合は割増賃金も全額支払います。

法定労働時間を超過して働く場合は、36協定の締結が必要です。締結していない場合は罰則の対象になるため、必ず36協定を締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出た上で、外国人本人に周知しましょう。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

関連記事(ライトワークスブログ):「36協定とは」をわかりやすく、かつ網羅的に解説!具体例あり

採用から入社までに時間がかかる

外国人は在留資格に関する手続きなどが必要なため、日本人と比べると採用から入社までに時間がかかるケースが多く見られます。

一般的に海外在住外国人を採用する場合は在留資格の新規取得、国内在住外国人の転職や新卒採用の場合は在留資格の変更手続きが必要です。各手続きの標準処理期間は、新規取得が1~3カ月変更が2週間~1カ月とされています。

自社の業務内容に必要な在留資格を取得していないとせっかく採用しても業務を開始できないため、入社日から逆算して採用活動を行いましょう。

参考:弁護士法人Global HR Strategy 外国人雇用相談室

参考)

出入国在留管理庁
「不法就労防止にご協力ください。」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留カードとは?」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留資格一覧表」(閲覧日:2024年2月1日)
「資格外活動許可について」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留カード等読取アプリケーション サポートページ」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留カード等番号失効情報照会」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留資格認定証明書交付申請」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留資格変更許可申請」(閲覧日:2024年2月1日)
「就労資格証明書(入管法第19条の2)」(閲覧日:2024年2月1日)
「所属(活動)機関に関する届出(教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号(ハ)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修)」 (閲覧日:2024年2月1日)
「所属(契約)機関に関する届出(高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能)」(閲覧日:2024年2月1日)
「新規上陸後の住居地の届出(中長期在留者)」(閲覧日:2024年2月1日)
「住居地の変更届出(中長期在留者)」(閲覧日:2024年2月1日)
「在留期間更新許可申請」(閲覧日:2024年2月1日)

厚生労働省
「外国人雇用状況の届出について」(閲覧日:2024年2月1日)
「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」(閲覧日:2024年2月1日)

厚生労働省,大阪労働局職業安定部職業対策課,ハローワーク(公共職業安定所)
「外国人雇用Q&A」(閲覧日:2024年2月1日)

厚生労働省,都道府県労働局,ハローワーク
「外国人雇用はルールを守って適正に」(閲覧日:2024年2月1日)

日本年金機構
「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」(閲覧日:2024年2月1日)

東京都
「外国人材と働くためのハンドブック~採用から定着まで~」(閲覧日:2024年2月1日)

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